和歌山を拠点に関西シーンで活動する、G./Vo.竹中寛知とDr./Cho.飯塚千明からなる男女2ピースバンド、Creamcan.。2015年の結成以降、2枚のフルアルバムのほかにもミニアルバムやシングルなどを自主リリースしてきた彼らが、初の全国流通盤フルアルバム『Mountainy』をTESTCARD RECORDSからリリースする。NirvanaやSonic Youthといった90年代のUSオルタナティブロックをバックボーンに持ちながらも、彼らの生々しく荒々しいサウンドは1つのジャンルには収まらない。ブルースからフォーク、プログレ、ヒップホップまで様々な時代の音楽を貪欲に吸収・消化して、ヘヴィかつダーティな面とメロディアスで美しい面を併せ持った独自の音楽性を作り上げている。“郊外が生み出した、ドス黒い音のかたまり”というキャッチコピーが言い得て妙の、和歌山という土地だからこそ生まれ得た音楽的ミュータント2人に話を訊いた。
「初期はとにかく録音を繰り返していて、“残さねば!”という感じでしたね」
●Creamcan.は2015年に結成されたそうですが、最初からギターとドラムの2ピース編成でやろうと思っていたんですか?
竹中:僕ら2人は高校が同じで、最初は一緒にインストバンドをやっていたんです。その時はベースとパーカッションもいて、4人編成でした。
●最初はインストバンドだったんですね。
飯塚:元々、(竹中)寛知くんは“ギタリスト”という感じやったんですけど、高校3年生くらいから突然歌いだしたんです(笑)。でもやってみたら、案外“イケるな”となって。
●そこから歌い始めたと。当時はどんな音楽性だったんですか?
竹中:今よりもっとノイズっぽくて、マイナーな感じでしたね。ギターとベースとドラムとパーカッションだったんですけど、みんなでノイズを出しているだけみたいな…。
●普通の高校生がやる音楽ではないような気が…。
飯塚:彼(※竹中)がちょっと変わっているんですよね(笑)。Beckがすごく好きなので、その影響もあるとは思います。
竹中:でもインストバンドの時は、まだ何も考えていなかったというか…。
飯塚:やりたいことをやっていただけですね(笑)。
●元々はどんな音楽が好きだったんですか?
竹中:僕らは特に90年代のアメリカ~イギリスの洋楽が好きですね。70~80年代の音楽も聴いているんですけど、一番影響を受けているのは90年代のサウンドだと思います。Sonic Youthとかも含めたアメリカのその時代のムーブメントが好きで、共感できるので、自分もそういう音楽をやりたいなと思っていました。
●リアルタイム世代ではない時代の音楽を聴くようになった理由とは?
竹中:レコードを聴くのは、元々好きだったんです。それで高校を卒業して2ピースでCreamcan.を始めた頃に、同じ編成なのでThe White Stripesみたいなことができるかなと思って色々と調べていた中で、ブルースのレコードを色々と聴くようになって。戦前ブルースが好きになってから、どんどんハマっていきました。他にも70年代だとSyd BarrettやPink Floydといったプログレも好きだし、Sex Pistolsみたいなパンクも好きですね。
●The White Stripesの名前も上がりましたが、やはり2ピース編成ということでモデルになっている部分はあるんですね。
竹中:あと、僕らはFlat Duo Jetsというアメリカのバンドがすごく好きで。2人組のブルースっぽいガレージロックのバンドなんですけど、そのバンドに憧れて自分たちも2ピースでやりたいなと思いました。
飯塚:このバンドを始めた当初は、すごく意識していましたね。
●結成以降は、ライブでバンドのスタイルを固めていった感じでしょうか?
竹中:最初は、ライブを全然していなかったんです。スタジオに2人でこもって、とにかく曲を作っていました。でもスタジオに通いまくっていたら、お店の人が「ライブはしないの?」と声をかけてくれて。そこから紹介していただいて、イベントに出演したりするようになりましたね。
●ライブよりも、まずは制作からだった。
竹中:初期はずっと録音していましたね。
飯塚:ライブもしていないのに、“とりあえずアルバムを作る!”みたいな感じでした(笑)。
●これまでに自主でフルアルバム2枚のほか、ミニアルバム4枚とシングル2枚をリリースしているんですよね。
飯塚:とにかく録音を繰り返していて、“残さねば!”という感じでしたね。
●しかも前身バンド時代にも、フルアルバムを2枚出しているという…。
飯塚:当時はすごく時間に追われながら、作りましたね。まだ高校生やったから、他にやることも色々とありつつという感じでした。
竹中:でも僕らの通っていた高校は舞台や芸術について学べる学校で、レコーディングに関する授業もあったんですよ。だから学校でもずっと録音ができて、楽しかったですね。
●芸術系の高校に通っていたんですね。
飯塚:そこで音響について2人で勉強しながら、バンドもしていた感じです。だからCreamcan.の音源は全部、録音やミキシングを寛知くんがやってくれているんですよ。
●そうなんですね! そして今作『Mountainy』がアルバムとしては初の全国流通盤になるわけですが、レーベルであるTESTCARD RECORDS主宰のCattleとは音楽性的にあまり近くないような…?
飯塚:私がCattleの大ファンなんです。Creamcan.として初めてのイベントを企画した時に、私が「ゲストとして来てもらえませんか?」という突撃メールを送ったら、快く承諾してくださって。それで和歌山にCattleが来てくださったところから、Creamcan.のことを気に入っていただいた感じですね。私としてはTESTCARD RECORDSから出せるということが夢のようで、いまだにフワフワした気持ちです(笑)。
●ハハハ(笑)。千明さんがCattleを和歌山に呼んだのがキッカケだったと。
飯塚:そうなんです。そこから自分たちも東京に呼んでいただいたりしていた中で、「今度CDを出そうよ」みたいな感じでお声がけいただきました。